記録:2022-Oct

仕事は忙しくないけど生活が忙しい。感想が全然書けていないけど、そうこうするうちに11月も終わるのでまたまた10月のまとめを今さら。

マイケル・サンデル『これからの正義の話をしよう』

ここ数ヶ月哲学の入門書を読み漁っていたおかげで刻み込まれた知識の轍に沿って読めたので、以前手に取ったときよりも内容がするすると頭に入ってくるようになっているのがわかっておもしろかった。今はコミュニタリアニズムというものについてもっと知りたいと思っている。

木下龍也『あなたのための短歌集』

仕事終わりになんとなく手に取ったら、ページをめくる手がとまらなくなってしまって、ぼろぼろ泣きながら読んだ。知識を得るための読書が栄養摂取としての食事だとしたら、詩歌を読むのは味わうための食事。空腹だとすぐに飲みくだしてしまうので、もうすこし丁寧に向き合えるときに再読したい。

Daniel Keyes "Flowers for Algernon"

今の自分が最高でここから先は転げ落ちるだけ、という恐怖の印象ばかりが残っている作品だったけれど、ひさしぶりに読みかえすとやはり見えるものが全然違うなあと思う。手術を受ける前から人間だった、と幾度もくりかえすチャーリーの言葉を忘れたくない。

中谷宇吉郎『雪と人生』

新鮮な読み物 - 地上のまなざし

松村 圭一郎・中川 理・石井 美保編『文化人類学の思考法』

友人が貸してくれた。文化人類学とはどういうものかをいろいろな切り口で見せてくれる入門書。マルセル・モースの贈与論について触れていたところがおもしろかった。松村圭一郎氏、最近読みたい本を探していると目にすることの多い名前なので、何か縁を感じる。

凪良ゆう『美しい彼』『憎らしい彼』『悩ましい彼』

平良の傲慢さを鋭く描写してあったのが良かった。どうしたって清居に肩入れしたくなっちゃう。他者の相互不理解を描いた作品としてはつくづく秀逸だと思うけれど、現実のクィアとは一線を画す視点というか、「BLはファンタジー」みたいな匂いをどうしても感じるので、うーん……と思いながら読んでいた。良くも悪くもBL、と友人が評していたが本当にそのとおり。私はボーイズラブ作品の愛好者だけど、やはりファンタジーにしてしまいたくはないので。映画化はものすごく楽しみにしている。

漫画

最遊記RELOAD 6~10巻

欲望との対峙 - 地上のまなざし

ギヴン8巻

映画

T-34 レジェンド・オブ・ウォー

もしかしたらロシア映画を観たのは初めてだったかもしれない。独ソ戦時代の戦車エンタメ映画という位置づけだが、ロシアがウクライナ侵攻をしている今観るのはかなり感情に負担がかかるもので、よほど観るのをやめようかと何度か思った。一緒に観た連れが、あなたは観たらうしろめたくなるだろうなと思っていた、とあとで言っていて、でもそれを先に言ってくれなかった理由もわかる。おもしろかった、のだ。おもしろいと思えてしまうことがつらくて、見終えてからもその部分に触れるのを避けて感想をこぼしていた。戦車や軍隊や規律や統率や権力に魅惑されてしまうことが、平和な世界であれば笑って話せたかもしれない(もちろん、過去は現在と地続きだから、かりにこの世界が完璧に平和を実現できていたとしても、エンターテインメントに昇華してしまうことの危険性は消えるものではないのだけど)。でもやっぱり今、この世界で起きていることを考えるとかなり苦しくて、つらかった。男と男の執着の物語。どうしようもなく惹きつけられた自分がいることをどう受け止めていいのかわからない。ドイツの将校イェーガーのぎらぎらとした瞳が目に焼き付いている。

RRR

映画館を出たあと、同じ回を見ていたほかの客が「けっきょく一番かっけえ男は馬に乗るんだよなあ」と話していたのが聞こえて、思わず笑ってしまった。主演俳優のふたりが対談で「理屈では飲み込むのが難しいのに、それでも納得してしまうような映画」と話していたが、言い得て妙である。三時間という長丁場の作品だが、着実に増してゆく尿意(開始直前にトイレに行っているのに、である)を別にすれば、まったく長さを感じさせない疾走感がすごかった。一緒に見た連れは二度目の鑑賞だが、初回よりも短く感じたらしい。三時間って長いよなと思うが、それでも無駄なシーンはないどころか、これでもシーンを削ったのだろうと思わせる作りである。植民地主義の悪辣さを描いているからこそ、プロパガンダ色は否めないが、荒唐無稽さが中和しているので胸焼けせずに観られるバランス感覚が巧いと感じた。

ドラマ・アニメ

TIGER AND BUNNY Season 2 第2クール
OITNB シーズン4~7

見てよかった、いろいろな感情が渦巻きすぎて言葉に落とし込めずにいるうちにすっかり風化してしまって歯がゆい気持ちになっている。日本のサブカルチャーで主人公の多くが若年層であることを、自分が三十というもはや主人公になれない年齢になってみて初めてもどかしく思うようになった。これもまたブッツァーティの言う時の遁走の効果のひとつだろう。だからこそ、この作品があらゆる女たちのシスターフッドを徹底して描こうとしたことに、ほんとうに嬉しい気持ちになった。

演劇・舞台

滝澤諒ソロイベント Get 2gether!

ソワレだけ行ったのだけど、マチネもチケットとればよかったと後悔した。楽しませたい、という気持ちに食らいついてステージのうえに立つ滝澤さんはかっこいいし眩しい。

ノラ・ジョーンズ@日本武道館

悪友に誘われて。一度は生で聴いてみたいと思っていたアーティストだったので、思いがけず夢が叶って嬉しかった。好きな曲も聴くことができて大満足。帰りに悪友と酔っ払ったのも良い思い出。幸福だった。

ゲーム

アイドリッシュセブン 第6部1章~4章

虎於が自分のやりたいことを言い出せずにいる場面がどうしようもなく苦しくてぼろぼろ泣いていた。それ以外でも泣いていたけれど……。アイドリッシュセブンは泣きすぎて脱水で頭痛を併発する作品なので、翌朝に余裕がある時にしか読めない。

九条鷹匡のおこないに対して、天が明確に、いっさいの妥協もなくNOを突き付けてくれたこと、彼がしてきたこと、しようとしていることは悪いことなのだとはっきり言ってくれたことに安堵したとともに、それを天に背負わせてしまっていることにどこか罪悪感があるなあと思った。

環と壮五のやりとりもずんと心に響いた。おとなになっていくというのは、自由になっていくことだと思っていたけれど、実は自分をつなぎとめるものが増えていくことでもある、というのは私自身最近よく考えること。