2月2日(火)バグ修正

8時すぎに起きる。8時半から10時までひとつ会議に出て、そのあとはアニメ『ワールドトリガー』の続きを見ていた。

はじめこそ登場人物の多さについていけなかったものの、描かれる世界を理解するにつれて、ぐんぐんと面白さが増してゆく。戦闘技術の多彩さは、見ていて飽きることがない。漫画には漫画の良さがあるのだろうけれど、こういう動きの派手な描写は、アニメだとより映えるから楽しい。界境防衛組織の本部長、忍田真史という人間にすっかり魅せられている。この作品の主役の少年は15歳の中学生で、その周辺の主要キャラクターも10代が主だ。20代前半の戦闘隊員たちも登場するが、そのほとんどはベテランとして扱われている。”少年”漫画なので当然といえば当然だけど、27歳の私からすれば彼らはかなり若いし、感情移入するにはもう遠すぎる。たくましかったり、美しかったり、格好良かったり、魅力あふれる生き様をする彼らが自分よりもずっと若かった時、彼らのようにはなれないままこの年齢になってしまったことが、たまにさみしい。だからこそ、忍田本部長みたいに、大人がかっこいいシーンがあるのは嬉しいのだ。33歳の彼は私にとってリアルで、希望である。そういえば『血界戦線』に感じた、孤独に寄り添ってもらえるような感覚も、近いところに起因するものなのかもしれない。

それにしても、昨日に引き続き、ぞっとするほど穏やかだ。体が軽い。アニメを見る集中力も格段に上がっている。これまではふっと意識が逸れて、話の流れを見失って巻き戻すというのをしょっちゅうやっていたのだけど、今日は一度も途中で止めていない。ちょろちょろと残った仕事もいくつか片付けたけれど、これまで数時間かかってもできなかった作業が十数分で終わったりもした。気持ちは凪いでいて、思考は晴れている。もしこれが「正常」だというのなら、これまでどれだけの枷を背負わされていたんだろうと思って、なんだか腹が立つくらいだ。久しぶりに連絡をよこした友人にそのことを話したら、人生のバグ修正だねと言われた。その考え方は良いなと思った。バグってたのかなあ、今まで、ずっと。

19時に会議を終え、近所まで買い物に行く。いつもだったら億劫で寝間着のうえにダウンを羽織るだけで出かけていたのに、今日はわざわざジーパンに履き替えた。このところ惣菜コーナーにしか立ち寄らなかったのに、久しぶりに青果売り場まで行った。帰宅して、夕食の支度をした。包丁と火を使った料理もずいぶんと久しい。といっても、ほうれん草と豚肉を鍋に放り込んだだけの簡易な常夜鍋だけど、それだってカップ麺ばかりの日々から考えればずいぶんまともな食事だ。食事を終えてから、食器を流しに下げて、風呂に湯を張って、風呂に入った。動作と動作のあいだにあった数十分のロスもなく、次から次へと動けている。こんな自分は知らないから気持ち悪い。つい先週の真っ暗な文章を読んでも、自分のものだと思えない。別人の感情のように、遠く断絶された感覚。こんなことだったら休む必要なんかなかったんじゃないか、と思えてくるから、まるでずる休みをしているような気分になる。怖い。

買い物に出たときの夜風に春を感じた。凍てついて鋭く尖った空気ではなく、すこし角の取れた、丸みのある空気で、これは日記に書こうと思った。そういうものを感じとる余裕も、書き残しておく余裕も戻ってきたことには、素直に嬉しいと思うのだけれど。