2022/1/1

新年といえば父方の祖父母宅で迎えるものだったのだが、祖父が亡くなり、祖母が介護施設に入ってからというもの、それもなくなった。母の手料理と酒を楽しみながらしゃべっているだけだと、ふだん泊まりに来るときとさして変わりがないので、あまり新年らしさというのを感じられない。とはいえ、食卓はいつもより華やかだ。

実家にいろいろ読みたい本を持って帰ってきたのだが、両親とテレビを観ていたり(『魔改造の夜』とか、『孤独のグルメ』とか、『アメリカン・アイドル』とか)、そうでなくとも脈絡なく会話がはじまったりするので、本を読むには向いていない。そういうわけで、食べて、酒を飲んで、漫画を読んで、ソシャゲをして、テレビを見ているうちに日が暮れた。それにしても、仕事のことをいっさい考えなくてすむ休みはいつ以来だろう。すこしも不安に思考を支配されない、こんな平穏を手にできる日が来ることなんて、いつからか期待することもやめていたのに。

おおむね幸福な元日だったけれど、上川一哉さんが劇団四季を退団したという発表があったことだけが悲しい。上川さんの演じるラム・タム・タガーがほんとうに大好きだった。

インターネットを眺めていると、家族とのかかわりを強いられる正月が苦痛だ、という声をたくさん目にする。ひるがえって私は、両親と食事をしたり酒を飲んだりすることもそれなりに楽しんでいる。この28年間、ずっと関係が良好だったわけではないものの、今はおだやかで健全な距離感で付き合うことができている。そして、それがきわめて幸運なことであると知っている。私が家族と「ふつうの」「ただしい」正月をすごせていることが、ほかの誰かを傷つけたり、引け目を感じさせたりしかねないことであることも、わかっていたいと思う。共感はできなくとも。言い訳がましいし、ずるさかもしれないけれど、こういう記録を外に見えるところに公開するときに、せめてこう思っているということを書きくわえておくことが、誠実さたりうると願って。新たな年を迎えた、すべてのひとが、そのひとの望むありかたで、一日を、一年を、過ごせますよう。