2022/4/12

寒がりの私もとうとう半袖のシャツとレーヨンのワイドパンツに切り替えた。風がよく通って心地が良い。スリッパも夏用のものに変えた。もうすこし春を味わっていたかったとも思うけれど、この空気が好きなので、どことなく気分が浮つく。会議を聞きながらマニキュアを塗っていた。夏めいた陽気に触発されて、鮮やかなクリアピンク。どちらかといえば男勝りとかオトコオンナとか言われることのほうが多かっただけに、ピンクという色は苦手だった。というか、私を女の子らしくさせるために手渡されるピンクのことが嫌で、女の子らしい女の子にはなりたくなかったから、ピンクも好きでいてはいけないのだと思っていた。私は自分のことを女だと表明して、女性装をして、男性とも恋愛をして、男性キャラクターやタレントに惹かれることが多い。総じて、社会的に女性として扱われる人間であり、そのことに大きな抵抗をおぼえずにいられる人間だ。だけど、あなたは女だ!と外から言われることには、無視できない違和感がある。友人と先日話したことだが、私が自身を女だとみとめるのは、「それが自然だと感じているから」ではなく、水が低きに流れるように「そのほうが楽だから」に過ぎない。たしかなのは、自分が男ではない、ということだけだったのに。だから、女性性と分かちがたく結びつけられるこの色を身にまとうことは、外から押し付けられる女性という型に、自ら押し込まれにゆくように思えて窮屈だったのだと思う。フェミニズムはそういう私を自由にした。ピンクがかなり好きな色だと気が付いたのは最近のことだ。ビビッドに彩られた指先がキーボードのうえで駆けずっていて嬉しい。