NIGHTMARE I'm with you Tour@CLUB CITTA' 感想

ナイトメアのツアーがはじまった。最後列だったし、そこまではしゃいだつもりはなかったのだが、名残でしっかりと首が痛い。セットリストも懐かしい曲が多くてすごく嬉しかった。楽しかった!という気持ちでライブハウスの外に出た。

YOMIくんがRUKAさんに「ツアーはじまりましたね」って話を振って、RUKAさんは「聞かれると思ってさっきなんか準備してたんだけどさあ、忘れちゃった」とあっさり返した。ファンもRUKAさんがMCでは愛想を振りまかない人だと知っているから、それを当然のものとして受け止めていて、客席にはゆるやかな笑いが満ちていた。RUKAさんが何を言おうとしたのかはけっきょく思い出されることなく次の曲に移った。アイドルの追いかけを長くやってきた身には、その気張らなさがなんだか新鮮で、バンドって全然アイドルじゃないんだなあ、と今さらながらに思い至った。MCで何を言おうとしたのか忘れて、そこで話が終わるなんて、完璧な偶像でいることを求められるアイドルではぜったいにありえないことだ。でも、そういうの、なんか良い。
「K-POPはすげえかっこいいと思うよ。でも完璧すぎるんだよね。俺はもっと人間の綻びみたいなもんを欲してるんだと思う」
先日会ったロック好きの高校の先輩に、K-POPは聞かないのかと尋ねたときの彼の答えだ。彼らのMCを聞きながら、その言葉を思い出していた。楽曲の歌詞は華美だったり重厚だったりするのに、同じ人たちとは思えないほどMCはゆるくてくだらない。お世辞にも品が良いとはいえないバンドだし、わりとぎりぎりの危なっかしさがある。そんなことを言いながら笑いをこらえきれずにいる私の感性も知れているが、いつか私にとってのアウトなゾーンを踏み抜いてくるんだろうなという気もする。それでも、たぶんこの人たちのことを愛せなくなることはない。完全無欠の偶像を崇拝するのとは違う、だめで下品でおもしろくてくだらなくて、それでいてかっこいい、徹底的に人間をやってくれる彼らのことが好きだ。

発売されたばかりの新曲『With』にかけて、この日の彼らはwithるという造語でひとしきり盛り上がっていた。音に身を任せながら刹那ごとで想起した感情も、彼らの楽しげな表情も、ぜんぶ記憶をすり抜けていく。それでも、あの人たちがこれからもwithってくって言うから、その言葉に委ねて、些末にとらわれずに楽しむことができるのだ。はじめてライブに行った時は、何もかも夢のようで忘れてしまうことがさみしいばかりだったけれど、楽しさを一緒に積み重ねてゆく感覚がだんだんわかってきたような気がする。享受するのではなく、共鳴するものだから。