『劇場版アイドリッシュセブン LIVE 4bit BEYOND THE PERiOD』Day2 鑑賞後記

※ネタバレ全開

 

気がついたら6月が始まって1週間も経っていて、動揺している。仕事をさっくり切り上げて、連れに誘われて映画館に。ムビナナこと『劇場版アイドリッシュセブン LIVE 4bit BEYOND THE PERiOD』のDay2を観た。これは映像作品ではなく、まごうことなきライブビューイング。

終演後の第一声は「狗丸トウマ………」だった。ライブに行って、ふだん好きな人とは違う人にばかり目がいってしまうのは、三次元のコンサートでもよくあることだ。でも、大好きな三月も、ほかのみんなも、きらきらしていて楽しそうで、ああコンサートだなあって嬉しかった。ゲームのシナリオでは彼ら自身の物語、アイドルをしていない時間の彼らにフォーカスをあてている部分が多いから、アイドル全開の彼らを堪能できたことも嬉しかったんだと思う。冒頭の開場アナウンスが終わって、ペンライトが彩る会場の客席がカメラに映った時点から目の奥がじわりと熱くて、コンサート前の心臓が炭酸にさらされたみたいにちりちりと泡立つ感覚そのものだった。私はこの楽しさをよく知っているし、この瞬間を心底愛している。その高揚感の果てに彼らが登場して、曲がはじまったとき、思わず泣いてしまった。

既存曲パートでいちばん楽しかったのはŹOOĻ!まず衣装デザインがすっごくかわいくて目を奪われた。Day2のŹOOĻ既存曲は、ササゲロ -You Are Mine-とBang!Bang!Bang!の2曲。ササゲロのほうは、わりとおもしろ枠の曲だと思っているのに、パフォーマンスがめっちゃくちゃかっこよかった。音源だけでは見えてこない曲の魅力がわかるのはライブの魔法だ。楽曲としてはDay1のほうでやっているZONE OF OVERLAPのほうが好きなんだけど、ライブでこの曲を聴けて良かった。トウマくんにやられたのもここで、目が離せなくなってしまった。グループとしてはTRIGGERが好きだけど、作中でのパフォーマンス力の高さというŹOOĻの位置づけをまざまざと思い知らされた体験だった。彼らが北欧のレッフェスというアウェイの会場で、自分らのことを知らない観客を熱狂の渦に巻き込んだときの熱ってこういう感じだったんだろう。

Re:valeは絶対王者全開で、ほんとうにかっこよかった。火柱を使う演出はつかいたいよね、と納得していた。冒頭のアイナナで泣いてしまって以降も、ずっと涙をこらえ続けている状態が続いていたのだが、Re-raiseでとうとう決壊してしまって、ぼろぼろ泣きながら見ていた。覇者の貫禄とでもいうべきものを、この人たちはまとっているんだと思う。曲が終わったあと、客席から鼻をすする音がしたから、泣いていたのは私だけじゃないらしい。

後半の新曲パートは、前半とは一転ちょっと落ち着き気味で、セトリとしてはもうちょっと緩急がほしかったところだけど、また違った雰囲気を楽しめた。TRIGGERの新曲BEAUTIFUL PRAYERがとても好きだった。あと、ŹOOĻの新曲は、あの彼らがこういう曲を歌うようになったんだ、という感慨でじんわりと泣けた。

いろいろ思うところがないではない。いくらアリーナ会場とはいえ、もっとキャパのでかいところでやってあげなよと思う。観客席を見るかぎりせいぜい5~6,000人規模くらいだったように見えたので、あの4グループが揃うならせめて1万人規模くらいでも良いんじゃないかなあと思った。チケッティングはさぞかし激戦だったことだろう。最前っていくらで転売されたのかなあ。それと、ペンラを頭の上まで掲げている客がけっこうな数いるのが気になった。応援グッズは胸の高さまで。ドルオタの鉄則。

演出面では、せっかく設置されているセンステを全然使っていないことが気になった。ほぼず~っとメインステにいた気がする。センステ近くのアリーナ席の人はむしろ期待する分だけかわいそうだなと思ってしまった。あと個人的な趣味としては、舞台昇降の仕組みがあるなら、ポップアップでばーんと飛び出す登場なんかをŹOOĻかTRIGGERにやってほしかった。

みたいなことを観終えたあとに考えていた。でもこれって、ぜんぶ三次元のコンサートでも考えているようなことだ。アイナナは二次元と三次元の境界線を曖昧にしていく意図をもった作品だと思っているから、やっぱりそれはすごいな、と思う。

そういう作品において指摘するには野暮なのかもしれないけれど、誰かが話し終わるまで次の人が話さないせいで生じる会話のテンポ感の悪さはどうしても気になった。これにかぎらず、映像や舞台など、音声のある媒体では「視聴者に台詞を聞きとらせる」ことが優先されるから、複数人が同時に喋ったり、言葉が重なってしまうようなシーンにできないのは仕方のないことではあるけれど、それが違和感のある間を生じさせてしまうのはちょっともどかしかった。

でも、総じてすごく楽しい夢のようなコンサートだったと思う。三次元アイドルの現場にもそれなりに出入りしてるからこそ、パフォーマンスの場面だけじゃなく、袖にはけるときに最後まで手を振り続けるところとか、そういうところに再現度の高さを見て嬉しかった。映画じゃなくてコンサートを作るんだという気概を感じたし、ほんとうにアイドルの現場に行ったのと同じような高揚感だった。アイナナはこの規模のコンテンツになっても舞台化をぜったいにしなかったり、オリジナルの彼らを2次元のまま3次元に存在させることにすごくこだわっている作品だと思っているけど、今回もそれが貫かれた制作で誠実だなあと思う。Day1も観に行きたい。