2023/7/1

やっと重い腰をあげて韓国へのフライトとホテルをおさえた。好きだった女の子とも向こうで会おうと約束する。ソウルは2020年の1月に行ったのが最後。先月出張で中国に行ったとはいえ、あのときは上司や、通訳もしてくれる中国人同僚たちがほぼずっと一緒だったから、ひとりで遠くに行くのはほんとうに3年半ぶりだ。あんなに頻繁に訪れていたのに、自分がどうやって宿を選んでいたのかとか思い出せなくて、旅の筋肉が衰えていることを感じた。それなりに親しみのある土地だったはずだが、それでもすこし緊張する。心地の良い緊張だ。この3年間、感染症の流行がもたらした閉塞感は、現在地から逃げ出せない、今目の前にある生活で自分の人生が完結してゆくことへの恐怖だったとも言い換えられる。知らない場所に行くことは、私にとってとりうる選択肢がまだ残されていることを証明する手段だったのだと思う。

夕方、ボランティアのあとは友人に招待してもらった舞台を観に池袋へ。待ち合わせまでに時間の余裕があるからとアニメイトに寄って買い物をしたら、けっきょくぎりぎりになってしまった。

舞台『アルカナシャドウ』、すっげー好きだった。率直に言って、話の筋に初見でついていくことはできなかった。だけどそれを補って余りあるほどの、感情と関係性の美しさにすっかり魅せられて、わけがわからないのに後半はぐずぐずと泣きながら鼻を啜っていた。西田大輔の書く脚本は、登場人物への愛を感じるといつも思う。それは主人公だけでなく、その世界に生きる人それぞれの物語をなるべくとりこぼしたくない、という意志である。どの人物もまぶしく、鮮烈で、もろくやわらかく愛おしかった。受け取ったものはとても大きいのだけど、具体的にどの部分が良かったとかではなくて、ただ総じてやわらかいものに包まれたような心地のいい観劇だった。言葉に落とせるようになるまでにはたぶんもうあと何回か観ないとならない。カテコで勝吾さんが言っていたとおり、噛めば噛むほど味わい深くなる作品だろうと思う。すごく楽しくて、良い舞台を観たなあと思う。友人に感謝。