2023/8/11

友人がムビナナの同行者を探していて、美容院の予約をずらせば時間的になんとか行けそうだったので名乗りをあげた。家事をそこそこに片付け、髪を切って、ネイルして、映画館の近くの喫茶店で落ち合った。珈琲ゼリーを食べたかったのに、売り切れだった。暑い日だったからきっとみんな頼んだんだろう。代わりに頼んだシロノワールは、練乳の甘さががつんと脳に響く感じでめちゃくちゃ美味しかった。

ムビナナ、たぶん19回目。友人は、ほんとうは夫と来る予定だったのに、喧嘩をして一緒に行くのをやめたんだそうだ。喧嘩してくれてよかったと思ったし、友人も喧嘩して良かったー!と笑っていた。この日の公演を友人と味わえたことが嬉しかったし、その楽しさを友人と分かち合うのが、ほかの誰かじゃなくて私で良かった。傲慢かもしれないけど、私たちじゃなきゃ、だめだったでしょ?同じアイドルを愛することで出会った、私たち。だって、すっごく楽しかったのだ。これまでに観た18回、一度たりとも楽しくなかったことなんてないけど、それにしても今回は「現場」というにふさわしい熱に満ちた会場だった。公開からだいぶ日が経って、応援上映に来る人のほとんどは、私たちと同じように繰り返し劇場に訪れてきた人だ。みんなが次に来るものをわかったうえで観ている以上、応援の仕方が予定調和的になってしまう側面は否めない。まがりなりにも「映画」という体裁をとっているから、キャラクターの台詞や楽曲を邪魔しない範囲での応援、という抑圧もたしかに存在する。そうした予定調和性こそが、三次元と二次元の埋められない溝であり、私がさみしく、物足りなく思ってきたものでもあった。今日だって連戦のオタクがそろっているのは同じだったはずだけど、何かが違った。内容を知っているがゆえの予期された「正しい」歓声ではなく、映し出された彼らの姿に新鮮に心をかき乱されて思わず迸ってしまうような叫びの感触があった。三次元の現場で味わう感覚とまったく同じものだった。叫びたかったところで叫べて、気持ちよくてたまらなかった。トウマーーーー!!!大好きだよーー!!って、何度も言った。届かないと知っていて(でもそれは彼が二次元の存在だからじゃなくて、遠くのステージにいるからだ)、それでも言わずにはいられなくて口走ってしまう、熱に浮かされた感じ。劇場内は涼しかったのに、終演後、肌はしっとりと汗ばんでいた。

"Journey" の間奏中、空中の水滴に虹色のプロジェクションマッピングをする演出のシーンで、7本のペンライトで7色の虹を作っている人がいた。その人が何を思って虹を掲げていたのかは知る由もないけれど、虹色は私や友人や周縁の人々にとって大事な意味を持つ色だから、その光景が嬉しくて、ずるずる泣いてしまった。公演終盤のMCで、大和と天が「がんばったな、おかえりって、肩を叩いて言い合おう!」「ここはそういう場所だから」と締めくくるシーンも、いつもに増して心にしみた。コンサートが帰る場所だというのを、私はセブンティーンに教えてもらったから、アイドリッシュセブンのアイドルたちもまた同じように言ってくれることが嬉しくて、いつもじんとしてしまう。だけど、この時は、週末にG4Yの公演を控えているタイミングであるだけに、帰る場所をたしかに用意してくれた彼らのことを思って、余計に泣けてしまったのだった。ところで、動きを熟知して次に何が来るのかわかっていてもなお、こんなにもトウマくんにめろってるのに、来週G4Yでまた知らない姿を見せられちゃったら、私、どうしたらいいんだろうね?どうなっちゃうんだろうね?

きわめつけに泣かされたのは、終映後、劇場から出ようとしたときだった。出口に続く通路は混みあっていて、私たちの後ろには就学前とおぼしき小さな子と、母親の二人連れがいた。その子が、何度も「ぜんぶたのしかったー!」って言うのである。「ママも楽しかったよ、ありがとう」と返す母親の声も心なしか嬉しそうで、さすがに振り返るわけにいかなかったけれど、あまりに美しい、やわらかくて優しい会話だった。母親が 「どの曲がいちばん好きだった?Pieces of The World?」と尋ねていたのも聞こえて、友人とふたりして涙目で顔を見合わせた。私たちは常々、PoTWをデモクラシーの曲と呼ぶ。人の営みを愛する、人間の美しさを、理性と知性を、輝きを信じる曲だから。その子に私たちのそういう思いを知ってもらうことはできないけれど、その子がそういう曲を好きだというなら、それはまぎれもなく私たちにとって未来への希望だった。私たち自身は子どもを産まない選択をしているけど、この世代によりよい社会を残すために生きていきたいんだよね、と話して友人と別れた。

そのあとは大学時代の友人たち3人と落ち合った。うち一人はずいぶん久しぶり。3人は先に飲み始めていて、私が合流したときにはすでにそれなりに出来上がっていた。仕事終わりの連れも合流して5人でしばらく飲んで、道すがら花火と酒を買って、公園で花火をしながら二次会をした。買った酒が悪かったらしく、気が付いたら記憶が飛んでいて、意識が戻ったときには午前2時をまわっていただろうか。吐いたりしゃがみこんだりしながら連れに家まで連れて帰ってもらった。