2023/8/22

朝起きたときに真っ先に頭によぎったのはやっぱり終わらせることへの欲求だった。隣に連れがいても、だめなときはだめだ。あいかわらず頭がうまく働かなくて、午前中の会議で自分が何を喋ったか全然おぼえていない。話したそばから忘れていく、何も脳に定着しないことの怖さ。終わらせたい、終わらせたいって声だけが頭の中でどんどんでかくなっていって、他がぜんぶかき消されていく。

気づけば明後日にはもう大阪でモリミュの幕が開く。まだアイナナ曲を聴きたい気持ちが強かったけど、半ばむりやりそれを振り払って、久しぶりに過去の公演のサントラを聴いていた。でもそうしたらちゃんと楽しみになった。アイナナにまだ浸りたい気持ちと、モリミュを全身全霊で受け止めたいと思う気持ち、どっちも本物だから困る。両方の根っこにあるのは、物語を味わい尽くしたいという果てしない欲望だ。物語に執着するとき、自分ってまだ人間を好きでいることを諦めていないんだなと思う。物語を創ることって、人間が善くあろうとするための試みだと思っているから。よりよき社会を志向する物語はたくさん存在するのに、どうして現実の社会はどんどん悪くなっていくのだろう、と思うと落ち込むけど。

ムビナナは来月で終映するらしい。発表を見て、足元が崩れ落ちていくような、突然宇宙に放り出されたような心もとなさに襲われた。あらかじめ告げてくれるだけ優しいと思うけど、この数ヶ月、毎日心の支えにしてきたものが突然なくなります、だなんて言われても、どうしたらいいかわからない。アンコールで舞台上にアイドルたちが戻ってきた時、トウマくんは「戻ってきたぜ!」と拳をつきあげてみせる。だからいつだって戻ってきてくれるんだと思っていた。そうだよね、コンサートって、終わっちゃうんだ。あたりまえのことなのに、さみしくてたまらない。円盤は家にあるけれど、でもそういうことじゃないんだよな。

連れは全休で昼過ぎに出かけていったけど、うまくいかないことが重なったらしくて夕方にはしょんもりした顔で帰宅してきた。おかげで一緒に買い物に行けたので私はちょっとうれしい。ひさしぶりに食事も作った。昨日はずっと沈んだままだったらどうしようって怯えていたけど、底は打ったのかもしれない。空芯菜のにんにく炒め、トマトと豚バラ肉の生姜炒め、残り物の胡瓜の中華風和え物と、肉野菜炒め。悪くなかったと思う。家計に響くから普段の酒は発泡酒に切り替えようかってこのあいだ相談したばかりなのに、私が悪酔いして自傷に走ったものだからまたビールに戻った。

食後は憂モリを1巻から読み返していた。舞台初日を明後日に控えて19巻まで読み返そうっていうのは、ちょっとあまりに無謀だけど、まあいい。4巻まで読んだ。初めて読んだときに感じた印象よりもずっと陰惨で、読んでいて苦しくなるシーンがいくつもあった。でも、やっぱり階級社会に抗う革命の物語だから、共鳴できるものの多い作品だ。ただ、この作品で階級制度が文字通り明文化された制度として存在するのに対し、現代社会は、建前上は身分の差が存在しないことになっている。実際にはそんなことはないのに。たしかな輪郭を持たない敵に、私たちはどう対峙すればよいのだろう。