2024/3/24

日の出から間もない頃に目が覚めたが、寒さに負けて寝袋から出られなかった。ようやく抜け出たのは6時をまわっていた。車の屋根にも窓にも、地面の石や落ち葉にも霜が降りて、一面きらきらしていて、それは美しい眺めだった。でも、太陽が出たらみるまに溶けて水滴に戻っていった。昨日あれだけ荒れていた湖面は穏やかに凪いでいて、なめらかに光を受け止めていて、息をのむほど静謐な世界だった。私がいるべき場所にすこし近づけた気がして嬉しかった。

片付けのことを考えるとそこまで悠長にしている時間もなかったのだが、とりあえず椅子をテントの外に出してきて、湖に向かって座って、コーヒーを淹れた。つめたい空気の中で飲むコーヒーほど美味しい飲み物もない。昨日の残りのミネストローネを温めなおして、バゲットに切れ目を入れて、昨日のアヒージョの油の残りで炒めた野菜と、バーナーで焼いたソーセージをはさんでホットドッグを作った。牛乳がすこし余ったので、コーヒーのあとにチャイも飲んだ。

片付けを終えてキャンプ場をあとにしたのが午前11時ごろ。空腹にはあと一歩というところだったので、車で西湖の周りをぐるりと一周した。昨日は気が付かなかったが、あちこちに残雪がある。積もっていた雪が溶けて穴が空いて、独創的なオブジェが林立していた。『もののけ姫』に出てくるこだまの背を伸ばしたみたいなやつら。いつ降ったものなのか、その高さから察するに、もともとはかなり深さがあったはずだ。

いい感じに腹が減ったので、せっかくだから名物を食って帰ろうとほうとう屋に寄る。最初に目星をつけていた店は満席で入れなかったので、近くにある系列店を教えてもらってそちらに行った。でかい鍋に野菜とうどんがたっぷり。寒いだけに美味しさもひとしおに思われた。甘く溶けた南瓜が愛しかった。従業員は重そうな鍋を両手に下げているというのに、まるで部活の走り込みかという勢いで終始店内を走り回っていて、かなり体力的にきつそうですごかった。

運転中の親友が眠気を訴えたので、談合坂のサービスエリアで休憩がてら、信玄餅アイスをおやつに食べた。連れにも土産の信玄餅を買う。甘いもの欲がふつふつとしていたところだったので美味しかった。

16時前に帰宅。とにかく早く煙の匂いを落としたくて、風呂を沸かして入った。そのまま布団に倒れ込んだら間違いなく気を失うのが目に見えていたので、寝室に近づかないようにして、簡単な掃除をして、洋服にアイロンをかけて、夕食を作りながら連れの帰りを待った。鶏と葱の醤油煮とピーマンと塩昆布の白だし酢和えを作った。あとは残り物の大根とツナのマヨネーズ和え、麻婆キャベツ春雨に、土産のビールと信玄餅。けっこうがんばったと思う。道具をばらしたり運んだりしてふだん動かさない筋肉をこきつかったので、体はばきばきになっていたが、寝る前に連れがマッサージをしてくれた。連れのマッサージはほんとうに上手で、こわばっていた体がほどけていくのがわかる。あっという間に眠りに落ちた。