180929

ひとり孫である私は、祖母の希望の星である。血の繋がりがあるとはいえ他人の希望を背負うなんて重たくて嫌なのだけど、祖母はたぶん私のことを世界一賢くて美しくて強い女か何かだと思っているので、もはやそれは私ではない。だから、適当に良い話ばかり、幾ばくかの誇張を交えて話してみせて、祖母の望む孫を作り上げている。昔の人に私の価値観を説こうとも思わないし、それで希望を奪ってしまうほうが残酷だ。祖母のことはそれなりに好きだし、そういう愛の形もあるという話だ。

だから、いつもぐっと抑える。良い人早く見つけてね、なんて、風邪に気をつけてねと同じくらいの言葉だと思おうとして、そうだねえと受け流す。わかっている。祖母が、心から、愛する孫たる私の幸せを願ってくれている言葉だと、よく知っている。その優しさにこたえるためならば、私の嘘もまた優しさになりうると思ってきた。それでもいつも笑顔は引きつってしまう。祖母を傷つけたいわけではないし、彼女が悪いとも思わないけれど、その価値観を自分に適用されることの暴力性に抗いたくなる気持ちはどうしようもない。今日はついに我慢できなかった。

「早く幸せにしてくれる男の人が見つからないかなあって思ってるのよ、本当に」

私を幸せにするのは私だよ、とつい言い返してしまった。わかってもらえるなんて思わないから、言うだけ無駄なのだ。そうだねえ、といつもどおり笑えばよかったんだ。そう思うのに、窮屈でたまらなかった。振り払ってしまいたかった。夢を見させてあげられる優しい孫じゃなくてごめんね。