181007 / 08

今日こそは文章を書くぞ、と意気込むのに、なんでかいまひとつ気持ちが乗らなくて断片ばかり量産してしまう時期というのはちょくちょくあって、この一週間はずっとそんな感じだった。帰りの飛行機は宇多田ヒカルがいかに天才であるかについて考えていたら終わってしまった。宇多田ヒカルはすごい。元恋人が好きでよく聴くようになったけど、本当にすごい。「愛情、向かって左に欠乏 だから君が必要」なんて、何度聴いても惚れ惚れとしてしまう。隣ではなく、向かって左。私もそういう言葉選びができる人間でありたいなと思う。好きな歌詞を挙げたらきりがない。未来はずっと先だよ。完成させないで、もっと良くして。

思考に明確な輪郭を持たせる作業はそれだけで体力の要る営みだ。この前の週はよく書いていたから、たぶん少し燃料切れしたのだろう。こういうバランス感覚の悪さは昔からだ。まあ、それでいいのだと思っているけど、書けない時のもどかしさはどうしようもない。するすると文章が紡げる時は、体の中の老廃物が言葉に連れられて出て行くような気持ちの良さがあって、そうじゃない時は濁った体液がどよんと淀んでいるような気がして不愉快だ。私にとって文章を書くというのは、ある種排泄行為に近いものだったりもするのかもしれない。特に、きわめて個人的かつ抽象的な感覚について記すときは。だから書けない時も、本当は無理にでも書いた方がいいのだ。その結果、未完成の言葉の塊が大量にできあがるわけだけど。旅行は非日常的で比較的書きやすいから、こういう時はありがたい。

前回の渡航はものすごく楽しかったのだけど、今回はなんだかうまくいかないこと続きで、いまひとつ冴えなかった。楽しくなかったわけではないが、あまり調子が良くなかった気がして、日本に帰ってきた今になって少し惜しい気持ちになっている。概ね自分の無計画性が仇になっているんだけど。

昨日は午前11時発と私にしては遅い便で、それで気が緩んでいたせいか、思いっきり寝坊した。もともと鈍行で空港まで行く算段だったから、特急列車に乗ればなんとか間に合う時間だったのは救いだったけれど、余計な出費になってしまったことに落ち込んだ。たかだか2000円くらいの話だけど、使いたいところに残しておくために抑えられるところは極力抑えるようにすると決めているから、自分の落ち度でそれが守れなかったことに腹が立った。幸い夜のうちに準備は全部終わらせていたから、荷物と上着をひっつかんで家を飛び出した。結果的には無事に搭乗できたから良かったものの、電車は遅延しているわ、今日に限ってオンラインチェックインの出来ない航空会社だわで冷や汗ものだった。この時点でどっと疲れてしまって、行きの飛行機はほとんど眠っていた。

仁川国際空港に到着したのが14時前。鈍行で1時間かけてソウルの中心部に出る。台風を心配していたけれど、思いの外進度が早かったおかげで快晴だった。ホンデイックで乗り換えるついでに、誕生日広告を目当てに駅の構内を少しふらついた。期待していたジョンハンはもちろん、この日が誕生日だったレイちゃんの広告も目にすることができて、少し気分があがった。いつ来ても学生が多くて賑やかな街だ。3月にあったジノのソロライブの会場の最寄りがここだった。ソウルにしても東京にしても、土地として特別に愛着があるわけではない。目的があるから行くだけの場所だけど、それでもこうして思い出のある場所が増えていくのは幸せなことかもしれない、とも思う。

ソンスで降りて、CUBEエンタの本社に併設された20SPACEカフェへ。靴職人が多い街なので、駅に靴にまつわる展示があったり、街中にイラストがあったりして楽しい。

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コーヒーで一息。今回の機内食はおやつ程度でお腹はへっていたから、軽食もここで食べようと思っていたはずだったのに、店を出るまで忘れていた。とはいえそこまで時間に余裕があるわけでもなく、空腹を抱えたまま公演会場のある狎鴎亭へと向かった。

やっぱり舞台は生き物なんだなあと思った。二度目の鑑賞とあって、ある程度話の展開がわかっているせいもあるかもしれないけど、先々週感じた衝撃は薄れてしまった。あと、前回に比べたらちょっと会場が温まりきっていなかったように感じた。日頃K-POPの現場に慣れている身からするとミュージカルを観に来る層というのは全然違うから面白いけど、昨日は観客の年齢層も前回よりかなり高かった気がするから、そのせいかもしれない。静かに作品を楽しめるといえばそうだけど、オール・シュック・アップの時も、前回のアイアン・マスクも、キャストのソロ曲のあとなんかは、拍手だけじゃなく歓声があがっていたりもした(それがこの国の観劇マナー的にどうなのかはわからないけど、あまり否定的な空気はなかったからきっと称賛の表明のひとつとしてありなんだろう)から、それが今回はなくてやや物足りない気分。会場の空気で演者のパフォーマンスは全然変わる。それはアイドルのコンサートでも、演劇でもミュージカルでも同じだ。自分が舞台に立つまでは、台本があるのだからそのとおりに粛々と演じるだけだと思っていたけれど、そんなことはないのだ。キャストもやりにくそうだなあと思いながら見ていた。それからこれは私が舞台に対して臨む姿勢として選択を誤ったなと思ったけれど、メモをとってしまうとどうしても作品の世界に没入できなくて良くない。書き留めておかないと忘れてしまうし、失いたくない瞬間がたくさんあるからとペンを片手に見ていたけれど、そちらに意識をとられてしまうのは本末転倒だ。とはいえ、胸に刻みつけたはずのシーンが終演後には思い出せなくなっているなんてこともざらで、結局これは永遠のジレンマなんだろうなあと思う。でも次はもうメモはとらない。良かったのは、前回聞き取れたところに、今回新しく聞き取れた部分が増えて、より登場人物の発言についていけるようになったこと。たぶん口調や語彙が古めかしいのもあって、一字一句理解するのは私の実力ではほぼ不可能なんだけど、台詞だけじゃなく歌詞も少しわかるようになっていたりして嬉しかった。

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終演後はまた出待ちしたけど、寒くてわりと辛かった。今月末にまた来るけど、着込んでこないとだめそうだ。前回も思ったけれど、オール・シュック・アップのときより格段に出待ちの人が増えている。もちろん一緒に出演していたINFINITEのドンウさんのファンもいたし、それ以外の俳優のファンもいたにせよ、ジノ目当ての人も桁違いだ。たぶん、体感ではドンウさんと半々くらいだったんじゃないかな。人気になっているんだな、と思う。いいことだ。嬉しいかといわれると、少し複雑。遠くなっちゃう気がして。でも遠くなってほしいとも思う。だって、1部で死んじゃうような役は、あの歌声には似合わないもの。わずかにあいた車の窓からジノの顔はほとんど見えなかったけど、ふわふわと風に揺れる金髪に向かってまた来ますと声を張り上げた。何かを伝えなくちゃいけない気がして、目の前にするとつい必死になってしまう。そういう自分は好きじゃないなあと思いながら、あっという間に通過していった車を見つめることしかできなかった。

夕飯は、狎鴎亭から少し離れた清潭のユッケビビンバの店に目星をつけていた。地図上ではそんなに離れていないのに、うまいこと通る路線がなくて思いの外時間がかかってしまった。しかも、駅から結構遠かった。時間をかけて行った甲斐があるくらいには美味しかったからよかったものの。

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結局食べ終わる頃には22時半を越えていた。帰りに駅まで近道をしようとして人気のない道に迷い込んだりして、ちょっぴり怖い思いをしたりもした。そのあとも駅でぼーっとしていたら電車を逃すわ、宿のチェックイン時間が24時までだと思っていたら23時までだと気が付くわで、なんか今回全然だめだなあとひとしきりしょげる。慌てて宿にメールを入れたけど、23時には全然間に合いそうにないし、チェックインできなかったらどうしよう、と心臓がばくばくした。幸い入れてもらえたけど、昼に荷物置きがてら先にチェックインしておくべきだった。何度かひとりで渡航して、悪い意味で慣れが出てしまっているなととても反省。気が緩みすぎ。

今朝は寝坊することもなく、比較的余裕をもって空港に到着。三連休の最終日とあって、成田行きの便のチェックインカウンターはかなり混雑していた。列を横目に、預け荷物のない私はセルフチェックインで発券してさっさと保安検査と出国審査を終わらせた。リュックひとつで移動できるのは本当に楽で良い。搭乗口の近くのカフェで飲んだカフェラテがすごく美味しかった。テイクアウトにしてもらい忘れたせいで、少し慌てて飲むことになってしまったのが惜しかった。


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成田についたのは13時ごろ。どこか美術館の展示でも寄って帰ろうかと思ったけど、祝日でどこも混んでいそうだから結局まっすぐ帰宅した。今月末にまた渡韓する時は月曜に有給をとるから、そのときに行くことにする。帰宅してからは荷解きして、久しくやっていなかった資格の勉強をちょっとして、仕事も少しだけした。怠惰な私にしては珍しい快挙だ。旅行中だめだった分を取り返したかったんだと思う。なんか、しゃんとしないとだめだなあと反省した三連休だった。しゃんとせねば。