11月14日(土)拡張する世界

今週はそんなに睡眠時間が足りていない自覚はなかったのだけど、目が覚めたのは14時を過ぎていた。洗濯機を回し、洗面台を磨いて、皿を洗って、掃除機をかけた。

それから『呪術廻戦』のアニメを全話見返した。この作品に惹かれる理由は、いまひとつ言葉に落とし込みきれていない。『血界戦線』の時と同じように、大事に観て、すこしずつ自分の中の位置を定めてゆくのが楽しみだ。ただ、五条悟という男に絡め取られる人は続出していて、私もその例に漏れない。自他ともに呪術師最強とみとめる彼が、ほかの道をいくらでも選ぶことのできたはずの彼が、教鞭を取る立場を選んだ理由に撃ち抜かれてしまった。この台詞は教育の本質だと思うし、私が現実に暮らしているこの国が教育を蔑ろにする理由そのものだと思う。

「夢があるんだ。保身バカ、世襲バカ、高慢バカ、ただのバカ、腐ったミカンのバーゲンセール。そんなクソ呪術界を、リセットする。上の連中を皆殺しにするのはかんたんだ。でもそれじゃあ、首がすげ代わるだけで変革は起きない。そんなやり方じゃあ、誰もついてこないしね。だから僕は教育を選んだんだ。強く聡い仲間を、育てることを。」

五条悟という人間、リベラルに描かれているよなあ、とぼんやり思ったのが最初だった。そこから、この作品において人間の負の感情の結集として描かれている「呪い」という存在は、現代社会に跋扈する差別感情になぞらえて観ることができるんじゃないか、というところに思考が飛んだ。人間vs人外という、属性で善悪を規定する危うさにすこし警戒した部分はあったけれど、単純すぎたのかもしれない。

この数ヶ月、浴びるようにアニメを観てきて、なんとなく自分の中での作品の向き合い方みたいなものがすこしずつ見えてきた気がする。一周目はとにかく世界を理解すること。何についての物語なのかを知ること。ここで何かが刺さったと感じたら、二周目以降でどこが引っかかったのかを見つける。あとは何度も観ながら、なぜ引っかかったのかを言葉に落とす。今まで人が読み解いたものを受け取る側でしかなかったけれど、世界にはいろいろな読み解き方がある。それを初めて実感して、ちょっと楽しい。世界を知ることは自分を知ることだし、やっぱりこれは知識欲を満たしている感覚に近い。批評に間違いはあるが正解はない、という言葉を胸におきながら、まだまだ観る。

19時半、友人と夕食。高校、大学、会社と、11年近く生きる場所を同じくする稀有な相手である。といっても、クラスも部活もサークルも授業も、なにひとつ重なったことがない。親しい友人は共通していたけれど、高校と大学ではとりたてて個人的な付き合いもなかったように思う。よく話すようになったのは会社に入ってからかもしれない。いずれにしても、ここ3年ほどは数ヶ月おきにふたりで飲みに行く間柄が続いている。不思議なこともあるものだ、と約束するたびに思う。ものすごく話が盛り上がるかというとそうでもない、でも会話は途切れない。けっして似た者同士ではないのに、共有できるものが少ないわけでもない。稀有な相手である。

『ハイキュー‼』を観てから、教職への思いが燻っているのだ、という話をしたら、友人は教育事業を手掛けるNPO団体でボランティアをしているのだというので驚いた。よければ紹介しようか、と言われた。教えてもらった団体のホームページを帰宅後ひととおり確認して、私もやりたい、と友人に連絡した。こんな形で夢が叶うかもしれないことに、すこしばかりの高揚感。

帰宅後は、『Free!』を2話、それから『血界戦線』を1期から見返した。早く寝るつもりだったのに、日記を書いていたら午前3時である。