1月28日(木)

苦しい。胸にずっと岩がのっているような圧迫感。息をうまく吸い込めない。助けて、って言いたいけど助けてくれそうな人が思い浮かばない。溺れたことはないけれど、たぶんこういう感覚なんだろう。

午前中は起き上がれなかった。布団のなかでぼんやりと死にたさを持て余していた。横になっているあいだは飼いならせる程度だ。それが体を起こしていざ仕事に向かおうとすると、とたんに牙を向く。比喩表現とかではなく、頭の中がすごい勢いで真っ黒に塗りつぶされていく。余白でどうにか思考を書きつけようとしても、他の思考がぞろぞろと湧いてきてあっという間に飲み込まれてしまう。小さな虫の大群が頭の中に住んでいる感じ。何にも考えられない。

昨日は会議を終えてしばらくはアドレナリンが出ていた状態で、ぽわぽわしていた。それが夜になってちょっと落ち着いてきた頃に心配事に思い当たってしまって、焦りにとらわれて考えがまとまらないまま上司に泣きついた。焦りに任せて状況を説明しながら、相手の沈黙の重さに、失敗した、と思った。上司に求めるべきは、パニックに陥っている時の精神的なケアではなくて、今行き詰っているところをどう解消して業務を回していくかという、建設的な助言だし、そのためには行き詰まっているところの棚卸しまでは、最低限、私がやっていかなくちゃならなかったのに。私よりもずっと忙しい人に時間を割いてもらって相談に乗ってもらうには、あまりに敬意に欠けた軽率な行動であることはわかっている。「相談事を明確にしてから相談してきて」という指摘が、何も理不尽なものではないのもわかっている。話してみたら、ものの30分で道筋はついた。そんなに難しい話でもなくて、なんでこれができなかったんだろうってひとしきり落ち込んだ。これくらい自分で考えてから相談すべきでしたね、って思ったままを口にしたら、「そうだね」と不機嫌な声で返されて、こちらに返す言葉があるはずもないのだけど、それがけっこう堪えてしまって、通話を切ってから泣いた。わかっている。わかっている。別に上司を困らせたいわけでも迷惑をかけたいわけでも苛つかせたいわけでもない。それでも、ほんとうにどうすればいいのかさっぱりわからなかったのだ。まともに思考の働かない状態で、その最低限すらできない状態だから、せめて取り返しがつかないことになる前に話しておかなくちゃ、と思っただけなのに。それをわかってほしいと思うのは、やっぱり甘えなんだろうか。傲慢なんだろうか。助けて、って言ってるつもりなのに、それが一番届いていなくて、足が竦む。この人に助けてもらえなかったら、仕事が立ち行かない。進んで休職したいわけでも、リーダーの責任を途中で放り出したいわけでもない、プロジェクトをめちゃくちゃにしたいわけでもない。そうならないために助けを求めているつもりだ。体調が思わしくないことも、それで迷惑をかけていて申し訳ないと思っていることも伝えているのに、やりとりのなかでそこだけなかったことのように返事が来たのも一回や二回じゃなくて、けっこう心が折られる。

午後も起き上がったはいいものの、会議をしている時間以外はほとんど頭が働かない状態で、それを落ち着かせようと横になってみたり、深呼吸してみたりしているうちに時間ばかりが過ぎていく。せっかく会議の少ない日だったのに、何も進んでいない。苦しい。楽になりたい。いちばん深く落ちたタイミングで、もうだめだと思って、知人に紹介してもらった病院に電話をかけることができたのだけが今日の収穫。

頭の中を埋め尽くす虫たちをすこしでも言葉にして吐き出すと、多少は視界が晴れる気がする。たぶん、数十分もすればまたむくむくと増えるけど。