記録:2021-2Q (2)

さすがに触れたものすべてについて感じたことや考えたことを記録しておくのは無理だと悟り、純粋な記録の試みへと早々に方向転換した。つぶやいていたのをそのまま貼っただけの感想がほとんど。五月、六月の記録。

■書籍

長野まゆみ『メルカトル』
好井裕明『違和感から始まる社会学 日常性フィールドワークへの招待』

むかし、人類学研究者の知り合いにあなたはフィールドワーカーに向いていると思う、と言われたことがある。その意図が、すこしだけわかった気がした。

沢木耕太郎『246』

書くことは暴力なんだな、と読みながら考えていた。ノンフィクション作家ゆえなのか、徹底的に自他の境界を引く冷徹さ、だからこそ書かれる物事は明瞭な輪郭をともなって読み手の眼前に映し出される。書くことは、書かないことでもある。書くことを選んで、書かないことを選ぶ。書かれなかったことは、読み手にとって存在しえない。それが怖い。

J.D.Salinger "The Cather in the Rye"

高校と大学の授業で洋書を読まされたことは幾度もあるけれど、自ら読みたいと思ったのはもしかすると初めてかもしれない。久しぶりに英語を舌にのせたくて手にとったが、記憶していたよりもずっと読みやすくて、するすると読んだ。こんなに面白かったなんてもっと早く知りたかった。

中島義道『差別感情の哲学』

読者に女を想定していないな、とほうぼうで感じさせる不愉快さに満ちていた。読書会をやっている人とボロクソに文句を言って溜飲を下げた。

■漫画

ヤマシタトモコ『さんかく窓の外側は夜』

お、お、面白かった……。ホラー耐性がさっぱりないので、怖くてひいひい言いながら読んだ。ボーイズラブの定番みたいな台詞が多用されているのに、文脈が怪奇に寄っているので色恋としてとらえることをゆるしてくれない。ボーイズラブを読み慣れている人間をぐらぐらさせる感じのバランス感覚がおもしろいなと思った(私が怯えすぎていただけかもしれない)

■アニメ

- 輪るピングドラム

ここ半年ほどアニメをよく観る生活をして、ようやくアニメの見方、楽しみ方がわかってきたように思う。漫画原作のアニメを見ることが多いけれど、物語性に重心を置くそれらと、オリジナルのアニメ作品というのはぜんぜん別物なのだというのをよく教えてくれたのがこの作品だった。

- 約束のネバーランド

釈然としない気持ちで2期を観終えてから、オリジナル脚本だったことを知った。作画は最後まで美しかったけれど、回収されない伏線だとか、ママたちの行動に一貫性がなかったりとかで脚本としてはわりと粗末に感じた。中途半端に原作を殺すまいとしたのが仇に出たのだろうか。

- 東京リベンジャーズ

クソ最悪ホモソーシャル作品。人間にはクソ最悪ホモソーシャル作品に惹かれてしまう性がある。暴力シーンがけっこう容赦なくて、腹に力を込めないと観られない。タイムリープというのは普遍的な設定だけれど、12年前の今日にしか戻れない、というのがこの作品のおもしろいところだなあと思う。時間の流れは不可逆で、残酷だ。幾度も、幾度も愛しい他者の死がおとずれる容赦のなさに、ともすればみているこちらの気持ちが折れそうになるけれど、それを次はどうリベンジしてくるのか、という希望をちらつかせるバランス感覚が巧い。マイキーとドラケンの関係性を見ていると「存在の補完」ということを考える。


- 憂国のモリアーティ

洒落た印象のサムネイルでわけもなく敬遠していたのだが、思った以上に血生臭くて好みだった。階級制とプロレタリア革命とノブレス・オブリージュなんて言葉を持ち込まれて私が好きでないはずがなかった。というかおおむね現代日本の物語だ。斉藤壮馬の声がどうしようもなく好きというのもある。

- NARUTO(波の国編~中忍試験編~木ノ葉崩し編~綱手捜索編~サスケ奪還編~風影奪還編~サスケ再会編))

二次元作品にふたたび傾注するようになったのはここ半年ほどの話だ。なけなしの小遣いとお年玉のほとんどを少年漫画に費やしていた中学時代からは、十年近いブランクがある。BLEACHDグレ、HUNTERxHUNTER、アイシールド21は単行本を揃えていたし、この作品を含め、銀魂やREBORN、ONE PIECEなど、連載中のジャンプ作品はわりによく読んでいたけれど、その後高校にあがってからは現実の比重のほうがずっと大きくなってしまって、それきりになってしまった作品が多い。いつかきちんと見届けようと思いながら、その途方もなさに躊躇していたのだが、いざふたたびこの世界に身を浸してみると、十年前とかわらず、あるいはそれ以上におもしろい。当然といえば当然で、表現にふるさをおぼえることはあれど、読んでいる私の知っている感情も、知識も、十年前よりずっと多いからだろう。古びた表現や価値観は随所にあれど、有無を言わせぬおもしろさという意味では色褪せない作品だ。

■映画

劇場版 魔法少女まどか☆マギカ[前編] 始まりの物語
劇場版 魔法少女まどか☆マギカ[後編] 永遠の物語
劇場版 魔法少女まどか☆マギカ[新編] 叛逆の物語

連休中、元恋人の家で一気観した。

 

■舞台

新国立劇場 バレエ公演『コッペリア
劇団四季『キャッツ』 
劇団四季『アラジン』
劇団四季オペラ座の怪人

大道具にひたすら圧倒されていた。「劇団四季オペラ座は、すごいらしい。」という謳い文句を、こうして掲げることの矜持がいい、という話を友人とした。ファントムは気持ち悪いけれど、そうして切り捨ててしまえない人なのだ、という話も。

劇団四季『ライオンキング』

出張先の名古屋で、同じく劇団四季を愛する会社の先輩と一緒に観に行った。