7月20日(火)隔たる夏

家にひとりでいるのが好きだ。だいたいは窓を開けておく。窓側は細い道に面していて、そこをとおる人たちの足音や話し声なんかは、地面からすこし離れていてもけっこうよく聞こえる。家の中からそれを聞いているのが好き。人とかかわるのはあまり積極的に望まないけれど、世界に自分一人きりだったらいいとは思わないから、他人の気配を遠くに感じているくらいがいちばんちょうどいい気がする。だから、猛暑の気に食わないところは、窓を開けていられないこと。外の世界と隔たれてしまう。ひとりの家は好きだけど、家の中に自分の立てる物音以外聞こえないのは居心地が悪い。夜になって気温が下がって、窓を開けたらようやく気分がすこしゆるんだ。

でも、夏は好きだ。夏の空気がいちばん好き。憂鬱になるような、心臓をじわじわと腐らせていくような息苦しい青さに満ちた空気の匂いが好き。今日はひさしぶりに仕事をはやめに終わらせて(午前の会議のために六時半から仕事をしていたのだもの)、その空気を目一杯肺に満たしながら暮れてゆく街をしばらく歩いた。

夕食をすませてからは、友人に貸してもらったセクゾのコンサート映像を観た。土曜日、インターネットにたゆたっているところでたまたま目に留まった彼らのミュージックビデオを観たら、すごく良かったのだ。そのことをつぶやいていたら、友人からメンバーの直近の出演予定の舞台の情報とともに、コンサートの映像を観てほしいから郵送したい、とメッセージが送られてきた。こういうのは勢いが大事だから、という言葉どおり、月曜にはブルーレイが私の手元にあった。

ミュージックビデオを観ただけでも、このひとたちのライブはぜったいに楽しいだろう、と直感的に思ったのは間違っていなかった。曲が好みだし、演出もすごくよくて(メンバーが操り人形のように踊る振り付けで、レーザーの光でその人形の糸を形どった演出には目を瞠った)、衣装も舞台に映える絢爛さで、こうあってほしいと思うコンサートがそこにあった。銀テープの雨の向こうの五人がまぶしくて素敵だった。良いステージは、ひとを幸福にする。