2021/9/28

引越し前、あんなに眠るのが億劫だったのが嘘のように、健全に眠くなって、健全に七時間眠って、健全に午前八時に起きた。

午前は会議。出来は悪くなかった、と思う。昼過ぎ、旧居の引き渡し。これでほんとうにさよならだ。感慨は思ったよりなかった。どうせ、新しいところからいつでも歩いていける距離だ。家に戻ってきてからは、昼寝を挟んだりしつつ、仕事をした。同僚たちが大喧嘩をしているのを聞き流しながら、斉藤壮馬のエッセイを読んだりしていた。今までなら、誰かが声を荒げているだけで動悸がしたものだけど、いつのまにかずいぶん鈍麻してしまったみたいだ。

斉藤壮馬の書く文章が、すごく好きだ。ちょっと気取っているけれど、突き放すような冷たさがあるわけでもなくて、やわらかな言葉のつらなりの合間に、ふと鉱物のようにかたい語彙がまじっていてどきりとする。本をよく読む人なのだというのがよくわかる文章だ。同じ文章を幾度読み返しても新鮮に好きだな、と思う。あなたのつかう言葉が好き、は私の持つ賛辞のなかでもとびきりのものだ。好き。

彼に触発されて、ずっと本を読みたいな、と思っている。何かを目的にした打算的な読書ではなく、読まなくちゃいけない、みたいな強迫観念をなだめるためでもなく、ただ本を読むために本を読みたい。今はそれができる気がする。昨日ひととおり本を本棚に戻して、もう読まないであろう本もあったけれど、おもしろそうなものがたくさんあって、読みたいな、と思った。今日は日記を書くことを優先してしまったけれど、眠る前に本を読む習慣をつけられたりしたらいい。

荷解きはダンボールをあと四箱というところまで来た。台所が広くなったので久しぶりに自炊をしようかと食材を買い込んだが、浄水器の取り付けに手こずって気持ちが折れたので、明日にまわすことにした。