春待酒

連れとの休日。丸一日休みがかぶるのは貴重なのでうれしい。パンとコーヒーでブランチをして、近所をぶらぶらと散歩。おもしろそうかどうかという評価基準のみでどちらに進むかどうかを決めて歩いた。ひととおり満足してさあ帰ろうかとなっても、またおもしろそうな路地を見つけるとふらふら引き寄せられてしまうので、けっきょく二時間近く歩きまわっただろうか。初めて存在を知った寺とか神社とか、たぶんもう二度と辿りつけない気がするので、もしかしたらまぼろしかもしれない。帰宅する頃には空腹で、買い物をして餅を焼いて食べた。

夜は、はりきってしまってなんだかいろいろ作った。大家さんのおすそわけの白菜で、年末に母に教えてもらった白菜とベーコンのグラタンを作った。同じくおすそわけの大根もまるまるひとつ残っていたので、大根おろしにして常夜鍋にした。昆布でとった出汁に料理酒をだばだばと入れ(当然あたためるとアルコールが気化するので、匂いだけで酔いそうな代物である)、そこで火を通した薄切りの豚肉とほうれん草をポン酢のたれと大根おろしにからめて食べるという、シンプルながらいくらでも日本酒が飲めてしまうおそろしい食べ物だ。私はあらゆる鍋のなかでこれがもっとも好き。連れは初めてだったようだが、気に入ってもらえて嬉しかった。大根はけっきょくぜんぶおろしで使い切った。このために新しいおろし金を買った甲斐があった。あと里芋を蒸して梅干しと鰹節と和えたものも作った。これも母に教わった。蒸し器を持っていないので鍋でどうにかやったけど、ちゃんとしたものが欲しくなった。

飲んでいたのは新春らしいからという理由で見かけて購入した春鹿の純米吟醸で、直前にビールを飲んでいた連れは「ビールに合う日本酒だ」とよくわからないことを言っていておもしろかった。どれも美味しくて自画自賛。連れとは正月じゃなくてもこんな調子だけど、なんとなく正月気分を一緒に味わえてよかった。