2023/7/4

午前はわりとまじめに仕事をする。翌日にひかえるプレゼンのための練習で、上司たちを相手にリハーサルをしていろいろ指摘をもらう。人前で喋るのはかなり得意なほうだけど、それはわかりやすさ、伝わりやすさの点においてであって、魅力を感じてもらう、売り込む的な営業活動向きの話術はずっと苦手だ。会社員も5年半やっていて、たいていのことは自分でできるようになっていて、どちらかといえば人にレビューする機会のほうがずっと多いから、こうやって若手の時みたいに手取り足取り教えてもらえるのはちょっとうれしい。がんばりたいし、期待にこたえたいと思っているはずなのに、なんか意欲が空回って体に満ちていかない感じがする。穴の空いた風船みたいな気分。

午後はそのレビューを終えたらすっかり気が抜けてしまって、それまで現実逃避に考えていた妄想をひとつ勢いで短編に仕上げた。けっして筆が速くない私にしてはなかなかのスピードだと思う。日記ばかり書いていると忘れそうになるけど、そういえば私って自分の文章のことが好きなんだった。私だけが創れる世界が文字の中で立ち上がっていく時の全能感、気持ちよさって何にも比べられないくらい得がたいものだ。ずいぶん久しぶりに味わえたことが嬉しい。日記もスケッチみたいで楽しいし、自分の深くに切り込むおもしろさもあるけど、でもそれはそこにすでにあるものを描写する行為であって、作り上げるのとは全然別だなと思う。まあ、あと、やっぱり私は自分の書くもので誰かを傷つけたいんだと思う。悪意ってことじゃなくて、誰かに私の爪痕を残したい。日記は個人のなかで完結する文章で、それは何より個人的で誰にも代替できないものだけど、本来代替不可能な私と他者が、それでもわずかに共有するもので響き合えることが人間の美しさだと思っているから。まだ誰かと共鳴することを諦められていないらしい。じゃあまだ大丈夫かも。

書けたことへの満足感はあるけど、やっぱり仕事をないがしろにしている後ろめたさはある。こういうのも社会から強制される罪悪感だなと思うけど。ちゃんとしたい、って毎日思って、ちゃんとできない自分に毎日落ち込んでる。友人が八乙女楽さんのことを「親から与えられたレールで生きることを強いられたとき、そのレールを外れるという方法ではなく、そのレールを自らの道として誇り高く生きることを選んだ人」と形容していたのがずっと忘れられない。なんて愛に満ちた美しい表現だろう!すこし違う文脈ではあるけど、社会に求められる私がいて、自分がそこに合致できていないことにフラストレーションをおぼえているなら、そのフラストレーションを解消できるようにすることが、自分に納得して、誇りを持って生きるためにできることだよなあと思う。私は自分が自分で誇れない、誇れる自分であろうとしないことが嫌なんだと思う。

連れは今日は自分の家に戻るとか言ってたのに、けっきょくこっちに帰ってきた。夕食はチキンステーキのパセリソース、ピーマンとしらすの炒めもの、カニカマと胡瓜のマヨネーズ和え。悪くはなかったけど、どれもなんか一歩惜しい。

食後は『インディ・ジョーンズ/魔宮の伝説』を観る。アクションとしては破天荒でおもしろかったけど、「未開の地」へのまなざしに植民地主義、オリエンタリズムの匂いを色濃く感じたのがだいぶだめだった。もうこういうのは作っちゃだめだよねという話を見終えてから連れとしていて、当時はまだアジアは宇宙とかと同じような異世界の位置づけだったけど今はもう地球上に架空の場所はないんだろうねという話になった。

寝る直前に、ジュンくんの新曲のMVをやっと見た。1回めは歌詞を見ないで映像と音楽だけで観ていて、正直音楽はあんまりぴんとこないかもなあと思っていたら、中盤からのジュンくんの表情の変化にぶっ飛んでしまった。2回め、歌詞を読みながらもう一度観て、さらにあっけにとられた。公式アカウントで「僕の伝えたいメッセージが込められている」と言っていたのを先に見ていたけど、こんなにも鋭利なものが出てくると思わなくて、どうしよう、ジュンくんってまだこんなに見せていない深さを持っている人だったの?浅い人間だと思っていたつもりはないけど、でもどちらかといえば天真爛漫で朗らかなあの人(そう思っていた私も、この曲の刃を向けられるひとりだ)から、こんなものが生まれでてくるというその魅力に、一晩明けた今もまだ心臓がはやっている。どうしよう、怖い。怖くて最高に魅力的だ。

ああ、私の好きな人ってこんなにかっこいいんだ。物理的な造形だけでなく、彼がJUNというアイドルとして生み出すものが、もうめちゃくちゃかっこいい。世界でいちばん好きな人がこういうふうに思わせてくれるのって、奇跡かも。私、ジュンくんのことを好きな自分のことはずっと誇らしい。6年間、ずっと。いや、今がいちばんかも。ずっとSEVENTEENのJUNのことが好きだったけど、JUNとして、文俊辉として、まだこれからもっと好きになれるのかもって、今回のを観て思った。どうしよう、それってすごくない?どきどきしてる。

アイドルって、存在が芸術なんだな、と思う。これは抽象的な比喩ではなく、そのままの意味で。作家が文章を書くように、画家が絵を描くように、音楽家が音楽を作るように、アイドルは自分自身の存在を、身体を芸術作品として作り込む。私には想像もつかないことだけど、すくなくともそうして提示される作品に深く耽溺できることが幸せだと、心の底から思う。ジュンくんを好きでいることが嬉しい。