2023/10/8

実家の近くで親の車に拾ってもらい、好物のうな重を携えて施設の祖母に会いに行った。89歳の誕生日を迎えたところである。すこし前までは顔を見せるたびに縁談はないかと尋ねられたものだが、最近はめっきり口にしなくなった。少し前に母が「あまりしつこくすると嫌われますよ」と釘を差したのが効いているのか(面倒だとは思っても嫌ったことはないのだが)、それとも単純に諦めがついたのか。今度いくつになるの?と聞かれて、30と答えたら、困ったわねえと答えたきり会話は終わった。

ほんとうなら、祖母も車に乗せて、一緒に鰻屋に行くはずだったのだが、足が悪く思うように動けないもどかしさから、すっかり外に出ることが億劫になってしまったらしい。お祝いでもなければ鰻は食べたくないのに、肝心の祖母がいないまま両親と私で店で食事をすることに何の意味があるのだろう、と考えながら食べていた。美味しいことには違いないのだが。外出への意欲を失い、同じ施設に入居する唯一の友人と過ごすこと以外に楽しみもなく、早く逝きたいという思いをしばしばにじませる祖母に、どう相対するのがいいのかわからない。会いに行くたびに目をそらしたくてたまらなくなる。孫の私の幸福(=婚姻)が何よりの薬になるであろうことを知っていながら、こうしてのらりくらりとかわし続けることへの後ろめたさは常にある。いっそ嘘をついてやったほうが、と考えたことも一度や二度ではない。

連れのために余分に頼んでくれたらしいうな重やら、和菓子やら日本酒やら、土産をたくさん親に持たされて、夕方帰宅した。表立って言葉には出さないが、私が「身を固めた」ことをどこかでは喜んでいるのだろうな、となんとなく感じる。嫌なわけじゃないけど、ちょっと鬱陶しい。和菓子はすごく美味しかった。連れを送り出したあとは、呪術廻戦の続きを読んで、ラグビーの試合を横目に見ながら家事をした。夜更けに掃除の興が乗ってきてしまい、午前3時近くまで起きていた。