2023/12/17 ドラマ『VIVANT』鑑賞後記

大掃除をしたくて、なんとしても予定を何ひとつ入れないと前から決めていた日。といっても、『VIVANT』の続きが気になって掃除が手につかなかったので、午前中は残りの4話をひと息に観終えた。

※ネタバレあり。全然褒めてません。

 

すごくおもしろかったけど、作品に通底する価値観がとにかく相容れなくて気持ち悪くてたまらなかった。胸糞悪くなったり、後味が悪かったりするのとはまた違う。描かれるものがまったく肯定できないという強い反発心がありながら、エンターテイメントとしては楽しめてしまうという、不思議な感覚を教えられた作品だった。

以下、所感いろいろ。

  • 日本のドラマでこんなにお金をかけてスケールのでかい話が作れるのは景気がよくていいなと思った。
  • 役者が豪華でみんなうまい
  • 伏線の仕込み方がわかりやすい分、回収されたときの気持ちよさもひとしお
  • 公安礼賛だ、みたいな批判は放送当時に見かけていたけど、それだけじゃなく、作品に通底する「国防」への肯定的な視線、「日本のために」みたいな熱がほんとうに気に食わなかった
  • これは創作におけるヘテロ恋愛を好まない立場だから余計にそう思うのかもしれないけど、恋愛描写が浅くてダサい。二階堂ふみは素敵だった。というか、あの人にまっすぐ見つめられたら逃げられなさそう。射抜かれたい
  • 圧倒的にチンギスがかっこよすぎる
  • 天才ハッカーとして出てくるのが女性なのは、邦画としてはめずらしい印象で良いなと思ったが、性犯罪の扱いが軽すぎるのが嫌だった。ひとの人生を壊しうるものを、物語の材料のたったワンシーンとして、物語を進行させるための小道具として使われてしまうことがゆるせなかった
  • 神道信仰を持ち上げているところに拒否感がある。乃木がたびたび神田明神に参拝することのほか、公安が太田の無事を神棚に祈るところも、あえてそのカットを入れることにうーん?と思った。
  • テントの真の目的は孤児救済!と崇高な善意かのように描かれていたけど、いくら一般人の被害を最小化しようとしていたとはいえ、テロを請け負って孤児救済をするのってけっきょくマッチポンプじゃん
  • 赤飯を食べて自分のルーツを思い出して浸るのもキモいし、日本人とは慈しみの心を持った美しい民族で……みたいなのもキモい。「祖国」とかいう物言いも無理。祖国を標的にするわけがない、というベキの台詞、乃木を欺くための嘘とはいえ、裏を返せば「祖国でなければテロを起こしても良い」という意味が成り立ってしまう以上、到底理解できるものではなくて鳥肌が立った。前半、薫が野崎の作った赤飯を食べてしみじみするシーンで「おや…?」と思ったときの違和感が、後半に向かうに連れてどんどん強まっていって、キモさマシマシだ~!とのたうち回っていた。自分、ナショナリズムとかむりなんで……。
  • 憂助とかノコルが「おとうさん」と呼ぶのがぞわぞわしてだめだった。畏怖と尊敬と庇護を求める媚みたいな色、大の大人が「おとうさん」と呼ぶこと、家父長制の幼児性みたいなのがよく見えて大変キモかった。それだけ役者が上手なんだろうが
  • だいぶ終盤になって乃木憂助が乃木希典から名前をとっているらしいことに思い当たって、深いため息が出てしまった
  • フィクションなので、実在する国家・組織・団体とは無関係であるとの断り書きは当然あるものの、イスラム系への恐怖を強める方向にはたらく色が見えて、うーん……

邦ドラマを完走したの、けっこうひさしぶりな気がする。楽しめたけど、いや、でも、すっげー嫌いな作品だな!という感じです。こういうのもあるんだなあ。

午後は当初の思惑どおり、それなりに気合を入れて片付けと掃除に手を付けた。といっても、風呂場以外はいつもの掃除と同じようなことしかできず、来週もうすこしがんばりたい。まあでも、ここ最近では一番家がきれいなので、気分は良い。

連れは友人たちと遊びに行っていて不在なので、夜はひとりで外食。最近ご無沙汰だったひいきのカレー屋に行く。いつ行っても私以外の客を見かけることがほとんどないのだが、続いてほしいなあと思う店だ。あいかわらず美味しかった。