2024/1/11

 起きたら喉の痛みがひどくなっていた。咳も浅いけど出ている。熱を測ったら37.1℃だったが、喉以外に体感できる不調はなかったので、午前中はいつもどおりに仕事をした。昼になってだんだんと関節痛が出てきて、困ったことになったなと思った。
 翌日は西へ出張の予定で、夜には前入りするつもりでホテルと新幹線をとっていた。単なる会議出席なら迷わずキャンセルしただろうが、今回に限っては現地に行かないといけない重要なイベントがあったので、無理を押してでも行きたい気持ちはあったし、「無理はしないで」というものの上司からもそれを期待されていた。とはいえ、他者に感染させるリスクがある以上、症状がある状態で公共交通機関を利用することも、クライアントに会うことも絶対に嫌だった。
 とにかく正当な言い訳がほしくて病院で検査をしてもらおうと、発熱外来をやっている近場の病院に電話をして午後に予約をとった。結果はインフルエンザもコロナも陰性だったが、結果を待っている間に一段と熱が上がった感覚があり、頭も重く感じられるようになって、帰宅して再度熱を測ったら38℃を超えていた。これはどう逆立ちしても行けない、と判断し、上司とクライアントに出張をとりやめる連絡をして、翌日の休暇申請を出して、午後5時前に仕事を切り上げた。
 早々に布団に潜り込んだものの、眠気がやってこなかったので、しばらくはセブンティーンの『ナナツアー』の続きを観たりしていた。旅程に出し物会が組み込まれていることを知った彼らが目を輝かせているのを見て、この人たちはほんとうに生粋のエンターテイナーなのだと思って胸がぎゅっとした。そのあとアイナナの特スト『アイドル人狼』を読んでいるうちに寝落ちていた。
 夜になって帰宅した連れがおじやを作ってくれた。食欲はけっこうしっかりあった。体調が悪いときに甘やかされるのって嬉しい。熱で頭がほわほわして幸せが増幅されているのかもしれない。

 結果的に自分の倫理に悖る行動をとらずにすんだことにはほっとしているが、もし微熱のままで、喉の痛み以外の症状が出ていなかったら、自分が行くという選択をしていたかもしれないことを思うと怖い。陰性だったとはいえ、発症と検査のタイミングからして偽陰性の可能性はじゅうぶんにあったし、だいたい名前のついた感染症でなくとも同じことだ。誰かに感染させていたかもしれないし、その誰かは、持病があるかもしれない。年配者かもしれない。連れや私は若いし体力もあるから感染してもそこまで心配していないけど、一歩外に出れば重症化のリスクがある人はどこかにいる。その人を殺すのは私だったかもしれない。自分がよければ、というのは明確に優生思想につながる感覚だ。コロナが5類に変更されたところで感染症がすぐに消えてくれるわけねーだろと思って、外出時のマスクはかたくなに着けてきたけれど、それにしたって気の緩みがなかったとはいえないよなあ、と我が身を省みている。