好き語り

そこそこ大きな仕事をひとつ終えてだいぶ肩の荷が降りたので、このところ聴けていなかったジノの月次カバー企画にようやく向き合える心持ちになって、久しぶりに聴いたら好きの奔流に飲み込まれたので、勢いで過去の曲を片っ端から聴き直している。私が好きになった頃は1桁だったこの企画も、いつしか50曲を越えていて、遠くまで来たなあと思う。昨年の11月に上がっていた "Santa Claus Is Coming to Town" が、あまりにも私の好きなジノの歌声だったので嬉しくなってしまって、なんとなくとくに好きな曲をまとめてみたくなった。こういう、好きなものを書き残したいという気持ちって、リスが冬眠前に食料を貯め込む行為に似ている気がしてちょっとおかしい。

 

これはずっと不動の1位。奮い立たせてくれる曲。生きようと思った曲。2019年のマガジノコンで信じられないくらいぐっちゃぐちゃに泣いて、一緒にいたフォロワーに見守ってもらったりしていたこともあった。

公開直後に書きなぐったもの。投稿のタイトルが2019になっているが2018年の文章。

190930 - 地上のまなざし

その翌日に書いたもの。

未来をひきうける - 地上のまなざし

 

ゲッセマネがひたすら飛び抜けて好きというだけで、ここからは順位付けはとくにない。

私はこの人の低音域の声がほんとうに好き。心臓を握りつぶされそう。

 

歌詞を読んで今さら目の奥が熱くなった。兵役に行く直前の頃の曲選、かなり泣かせに来ている。ヨウォンとのハモリがほんとうに美しくて大好き。

 

誇るべきPENTAGONのツインボーカル。しかしこの曲、はじめてまともに歌詞を見たんだけど、ぎょっとするくらい性的だな。よくこれ歌おうと思ったね。

 

ふたりとも歌がうますぎる。伸ばしながら音程を上下させるアレンジとか、歌の技術力をこれでもかと魅せてくれる曲。かっこいいなあ。

 

2018年1月の回。楽しそうに歌うところが好き。この直前のサイン会か何かで、来年もマガジノを継続するか尋ねた時にまだわからないって言われて、もしかしたら来ないかもしれないと思っていただけに、投稿されたときはほんとうに嬉しかった。この当時(G)I-DLEはまだデビューしておらず、ソヨンさんを知ったきっかけにもなった曲。すごく楽しそうにラップする人だ!と思った記憶。

こうしてみると意外とデュエットが好きなんだな、と挙げてみて気が付いた。和音が性癖なので。

やわらかな春の風が吹く日に聴くのも、小雨のつめたい日に聴くのも心地よい曲。

 

 


この3つは、歌のことしか考えていない姿がほんとうに好き。

この企画には、けっこう凝った映像のものもある。2020年のマガジノコンで、どの曲もどんな映像にしようか、どんなふうに歌えるかなって考えながらやってきたみたいな話をしていて、だからそういうのも彼なりの音楽の愛し方、敬意の表し方であることに違いはないのだけど、私はやっぱりただ歌ってくれていればいい。

 

ということで、好きなマガジノ10選はここまで。

初めて好きになった日のことを、今でもよくおぼえている。それからもう五年以上も経つらしい。私は会社員になり、彼は兵役に行き、そうするうちに私は死ぬことに魅せられていた状態をほとんど脱して、昇進もして、恋をしたり恋が終わったりして、苦しまずに生きられるようになった。以前のように、彼の歌声で傷ついたたましいを奮い立たせる必要もなくなった。あれほど望んだ安寧を手に入れて、死にたかった頃の感覚はあまりわからなくなってしまった。喜ばしいことだとわかっているけど、何か大事なものを失ってしまったようにも感じる。

彼のことを忘れたことも、好きでなくなったこともない。それでも思いの強度は下がった。そのことを後ろめたく思ってきたし、好きだと口にすることが怖くなった。あんなにも大きな存在に感じられたその人が、自分にとって必要なくなってしまったかもしれないことが怖かった。好きの総量でほかの人が勝るようになってしまったわけではないつもりだけど、限られた時間やお金というリソースを割く先として、瞬間風速が大きいほうになびいてしまうのは仕方のないことなのかもしれないと冷静に考える自分もいる。ジノのことはずっと好きで、たぶん好きじゃなくなることもないし、その代わり、これ以上好きになることもない。静かだ。

それでも、世界でもっとも愛するボーカリスト、私がそう呼ぶのは、あとにも先にもこの人だけである。歌のうまい人ならほかにもいる。心に響いた歌声も、泣かされた歌声も、彼以外にだってある。好きな歌手なら、ほかにもいる。そういう意味で、彼はけっして唯一無二などではない。だが、私のなかのボーカリストという肩書きは、彼だけのためにある。ほかの人には明け渡すことのない王座に、彼はずっといる。

ほんとうは私と同じように悩んだりする同年代の人間なのに、こんなたいそうな見上げ方をしてしまうのはアイドルファンの業だけど、彼の歌は私にとって強さの象徴だ。歌われる曲がどんなに優しく穏やかなものであれ、彼の歌声に音が乗った瞬間、生きなきゃ、と思わされてしまう。だから生きることに後ろ向きになっているときはあまり聴けない。

前みたいに四六時中さいなまれるような死にたさはもういない。それでも生きることをずっとためらっている。終わりにできないから生きながらえていることがずっと、ぼんやりと苦しい。彼の歌で生きてみようと思ったことを、もう忘れてしまっていることが悲しい。霧のような息苦しさを暴風で拭い去ってほしくて、彼の歌を聴く。

マガジノコン、今年はやらないのかな。ずっと待っている。